NISAは相続できる?非課税枠の扱いと“引き継ぎ戦略”をわかりやすく解説

「親のNISA口座って、亡くなった後どうなるの?」
「相続税ってかかる?非課税枠は消える?」

高齢の親のNISA運用が進むなか、“もしもの時”の資産の引き継ぎ方に悩む方が増えています。

新NISAでは非課税枠が拡充された分、相続時の資産額が大きくなりやすく、税務や手続きの不安も複雑化しています。

本記事では、NISA口座は相続できるのか?そのとき非課税枠はどうなるのか?という素朴な疑問から、贈与や信託との比較、親子で今から準備すべき戦略まで、FP視点でわかりやすく解説していきます。

なお、これまで当ブログでは「高齢の親の資産防衛」や「老後資金設計」の観点から記事を出してきましたが、今回は“相続発生後”に焦点を当てた実務的な視点で、過去記事とは明確にテーマを差別化しています。

もしもの時に慌てないために、家族で一緒に資産の“引き継ぎ方”を考えていきましょう。

NISAは相続できる?制度上の基本と“よくある誤解”

🧓「親のNISA口座、亡くなったらどうなるんだろう?」
👨‍👩‍👧‍👦「相続で受け取ったら、そのまま非課税で使えるの?」

多くの人がなんとなく理解しているようで、実は制度上のルールを誤解していることが多いのが「NISAと相続」の関係です。

ここでは、まず基本的な制度の仕組みとよくある誤解を整理していきましょう。

⚰️ 死亡時にNISA口座はどうなるのか?

結論から言えば――

🔻NISA口座は、被相続人(亡くなった人)の死亡時点で消滅します。

これにより、NISA口座で保有していた非課税の状態も終了し、相続財産として扱われます。

状況処理内容
NISA口座保有者が死亡非課税の扱いは死亡時点で終了
NISA口座自体相続されず、自動的に解約対象へ
保有資産「課税口座」に移され、相続財産として評価される

📌 つまり「NISA口座ごと引き継ぐ」ということは制度上できません

🚫 非課税枠は引き継げる?それとも消滅?

これは多くの人が誤解しやすい点です。

「NISAって非課税口座なんだから、親から子にそのまま引き継げるのでは?」

という声もよく聞きますが、

NISAの非課税枠は、相続では一切引き継げません。

理由はシンプルで、NISAは“個人ごとに設定された制度”だからです。

✅ 非課税枠の仕組み(イメージ):

区分内容
年間の非課税投資枠個人に一律:つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円
利益の非課税扱いその人が生きている間だけ適用
相続時の扱い非課税の権利は死亡時に終了・消滅

つまり、相続では“お金や株式そのもの”は受け取れても、「非課税の権利」は消えるという点をしっかり押さえておきましょう。

🧾「NISA=相続税がかからない」は本当か?

これもまた大きな誤解です。

🔍 NISA資産も、相続財産の一部として評価対象になります。

たとえNISAで運用されていた資産であっても、相続時には以下のように扱われます。

資産評価のポイント説明
評価対象保有していた株式や投資信託の評価額(時価)
税区分相続税の課税財産として計算される
非課税特例NISAだからといって相続税が免除されることはない

🧠 ここでのポイントは、「NISAの“非課税”はあくまで所得税や住民税に関するもので、相続税とは別次元」という点です。

🧠 体験談風ひとこと(読者の心に響く視点)

「父のNISA資産を引き継げると思ってたけど、実際は一度売却されて、課税口座に移っていました。知らないと“損した感”がありますよね…」
― 50代女性(読者モデルケース)

このように、「知らなかった」ことで資産の引き継ぎに不満が残るケースも少なくありません。

📍次のブロックでは、相続発生後にNISA口座がどう処理されるか? その具体的な手続きや課税の流れについて詳しく解説します。

相続時の手続きと課税の仕組みをやさしく解説

📝「NISAは相続できない」ことが分かったとはいえ、では実際に相続が発生したらどうすればいいのか?

NISA資産が相続対象となった際の手続きや税金の仕組みを、できるだけわかりやすく解説します。

📋 証券会社での手続きの流れ

被相続人(亡くなった方)のNISA口座は、証券会社側で凍結処理が行われ、以下のような流れで手続きが進みます。

🧭 相続手続きの基本ステップ

  1. 死亡届の提出(証券会社へ)
    • 戸籍謄本や死亡診断書を添えて提出
  2. 相続人の確定
    • 法定相続人の人数・関係を確認し、分割協議へ
  3. NISA口座の凍結と課税口座への移行
    • 保有中の株式・投資信託は「課税口座」に移される
  4. 名義変更 or 売却
    • 相続人の名義で新たに保有するか、売却して現金化するかを選択
  5. 相続税の申告・納付
    • 必要に応じて税務署へ申告(原則、死亡後10ヶ月以内)

📌 重要なポイント

相続人がすぐに使える状態ではなく、一度“口座の整理”が必要になるという点に注意しましょう。

💰 相続税・譲渡所得税の取り扱い

NISA資産も他の財産と同様に、相続税の課税対象になります。

税種別内容対象
相続税相続財産としての課税株式・投信・預金など
譲渡所得税売却時にかかる利益課税相続後に売却した場合のみ

💡 ケーススタディ

📌 相続人がすぐに資産を売却した場合、取得価格は「被相続人の取得時価格」ではなく、相続時点の時価となるのが原則です。

これにより、多くの場合は「課税なし」または「少額の譲渡益」にとどまるケースが多く、二重課税にはなりにくい仕組みになっています。

⚠️ 口座凍結から解約・売却までの注意点

以下の点に注意しないと、思わぬ手間や課税負担が発生することもあります。

📌 よくある注意ポイント

注意点内容
① 凍結期間中の値動き相続手続きに時間がかかる間、株価変動リスクあり
② 分割協議の不一致相続人同士で争いが起こると、処理が長期化
③ 名義変更時の書類不備戸籍・印鑑証明など複数書類が必要で、申請ミスも多い

🧠 FPからのアドバイス:

相続手続きは「感情×事務×税務」が重なり、家族間のトラブルにもつながりやすい局面です。
事前に口座整理や資産の棚卸しをしておくことが、“争族”を防ぐ最大の対策になります。

📍次のブロックでは、
「NISAが引き継げないなら、どうすれば良い?」という疑問に対し、生前贈与や信託を含む“代替戦略”をご紹介します。

非課税の“引き継ぎ”はできない?NISA制度の限界と代替手段

🧩「NISAは相続できない」──つまり、非課税の権利も消える。

では、大切に育てたNISA資産をできるだけ有利に“引き継ぐ”にはどうすればいいのでしょうか?

ここでは、制度の限界と代替策として使える3つの選択肢をご紹介します。

🎁 生前贈与という選択肢

最も現実的な手段の一つが「生前贈与」です。

NISAで増やした資産を、親が元気なうちに子どもへ贈与することで、一定の税制メリットを得られる可能性があります。

💡 非課税枠を活かす戦略

贈与枠年間110万円まで非課税(暦年課税)
方法NISAで売却→現金化→子へ贈与
メリット相続財産を圧縮できる/贈与の意図を明確に伝えられる
注意点贈与契約書・振込記録など“証拠”を残すことが重要

🧠 FPの一言:

毎年少しずつ資産を贈与する「コツコツ贈与」が、結果として最も賢く、家族間の信頼も育てやすい方法です。

💼 子どものNISAを活用する“積立戦略”

贈与したお金をそのまま使わせるのではなく、子ども自身のNISA口座で再運用させるという手もあります。

たとえばこんな流れ:

  1. 親のNISAで増えた資産を現金化
  2. 毎年110万円以内で子どもに贈与
  3. 子どもが自分のNISA口座(つみたてor成長枠)で運用を開始

💬 このようにすれば、世代を超えて非課税メリットを“リレー”する形になります。

📘 親世代は運用を終え、子世代が次のステージへ──
“引き継ぎ”ではなく、“バトンを渡す”という視点です。

🏛 信託・保険・名義変更は使えるのか?

NISA口座そのものは名義変更できませんが、資産そのものは以下のような制度で管理・承継が可能です。

仕組み内容向いているケース
教育資金贈与信託1,500万円まで非課税(2026年3月まで)教育費を目的とした高額贈与
死亡保険金付き保険受取人を指定できる相続対策・生活保障に
家族信託管理・運用・承継を契約で設計認知症や長期的な管理を想定

🧠 注意点:

これらは“制度の専門性が高い”ため、金融機関や専門家との相談が必須です。
しかし「資産を渡すだけでなく、“どう使ってほしいか”も設計できる」のが最大の魅力です。

📍次のブロックでは、
これらの選択肢を踏まえて「贈与と相続、どちらが本当に有利か?」をシミュレーション形式で比較していきます。

生前贈与と相続、どちらが有利?シミュレーション比較

💭「やっぱり生前に渡すべき?それとも相続でまとめて残す?」

資産を引き継ぐにはどちらにもメリット・デメリットがあります。ここでは、税金・手続き・精神的な負担を比較しながら、それぞれの選択肢を検討してみましょう。

⚖️ 税金・手続き・心理的負担の比較

比較項目生前贈与相続
税制優遇年110万円まで非課税基礎控除3,000万円+600万円×法定相続人
手続きの煩雑さ年ごとに贈与契約書が必要戸籍・遺産分割協議など煩雑
税務リスク連年贈与と見なされると課税の可能性あり税務署が内容を精査することが多い
心理的影響「もらった実感」が強く、感謝が生まれやすい相続時は争いの火種にもなりやすい
FPの所感計画的に渡せば節税にも信頼構築にも◎放置すると手間と争いの元になることも

📌 結論:

どちらが「正解」かではなく、家族の状況や資産の性質に応じて併用するのが理想です。

💰 110万円の非課税枠を活かした「コツコツ贈与」

たとえば…

📊 10年間にわたって毎年110万円ずつ贈与した場合:

年数贈与額累計
1年目1,100,000円1,100,000円
5年目1,100,000円 × 5年5,500,000円
10年目1,100,000円 × 10年11,000,000円

➡️ このように、「コツコツ贈与」なら贈与税ゼロで1,000万円以上の資産を移せる可能性もあります。

🧠 FPの視点:

書類を残すこと(贈与契約書・振込履歴・通帳など)さえしっかりしていれば、リスクは最小限。
「生前贈与=節税」というよりも、「感謝と信頼を育てる資産移転」という視点が大切です。

📦 親が元気なうちにできる資産設計とは?

🧓「そのうち考えるつもりだったけど、気づけば時間がない…」
相続はいつ起こるかわからないからこそ、今から準備をしておくことが家族への思いやりです。

今すぐできる3つの行動:

  1. 📄 家族とNISA資産の所在・目的を共有する
  2. 🏦 毎年の贈与計画を立てて、記録を残す
  3. 💬 子ども世代と資産の“使い道”について話し合う

💡「資産を渡す=現金を移す」ではなく、“想い”を含めて引き継ぐ行為
その設計に早すぎることはありません。

📍次はいよいよまとめです。
親のNISA資産を「どう残すか」だけでなく、「どう活かしていくか」という視点から、家族で備えるべき“相続時代のNISA戦略”を総括します。

まとめ|NISAと相続は無関係ではない。“備える家族”が勝ち組になる

👨‍👩‍👧「NISAは相続と関係ないと思っていた」

そんな人こそ、今日の記事で初めて“気づき”を得たのではないでしょうか?

NISAという制度は、投資の利益に対して非課税という恩恵を与えてくれる一方で、死亡と同時にその恩恵は失われます

だからこそ、「どう資産を育てるか」と同時に、「どう引き継ぐか」も考えておく必要があります。

本記事の振り返りポイント

テーマ要点
NISAの相続可否相続はできるが、非課税枠は消滅する
死亡時の流れNISA口座は凍結→課税口座へ→相続財産として評価
代替手段生前贈与・子のNISA活用・信託の併用で戦略的に引き継ぐ
比較結果相続と贈与は、併用と早期設計が最も効果的
本質資産を“渡す”だけでなく、“育て方”と“想い”も共有することが大切

🧠 FPライターからの一言

NISAで得た利益は、「家族の未来をつくる資産」です。
相続が近づいてから慌てるのではなく、今この瞬間から準備を始める家族こそ、最後に安心を得られると私は考えています。

資産形成とは、数字の話ではなく、人と人の信頼と愛情を未来につなぐプロセス。
「もしも」を想定することは、「これから」を大切にすることです。

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